2016.11.30示談金額について
前回の「交通事故示談金の計算方法(5)~物的損害~」で、交通事故示談金を構成する各損害について一通り説明が終わりました。
今回は、損害額を減額する方向に働く「過失相殺」についてです。
交通事故で発生する損害は、
「積極損害」
「消極損害」
「精神的損害」
「物的損害」
の4種類で、その分類と簡単な計算方法は既に述べたとおりです。
しかし、各損害が計算できたとして、その合計額を必ず支払ってもらえるわけではありません。
被害者側にも一定の落ち度がある場合、その内容に応じて損害賠償額が減額されることがあり、それを「過失相殺」と呼びます。
過失相殺の判断は、基本的に「赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)」の該当事例をチェックすることで行います。
まず、何と何の事故か(車×歩行者、車×車、車×自動二輪車、車×自転車)、どういう場所での事故か(交差点、交差点以外)、信号はあったのか、どういう動きだったのか(直進×直進、直進×右折、転回中、路外出入等)といったところから、該当する類型を探します。
「赤い本」には基本的なパターンとして、約200通りの類型が掲載されています。
各類型の該当ページには図が示してあり、ここで基本の過失割合が出ます。
例えば、「横断歩道のない道路を歩行者が横断していて、車道を進行していた自動車にはねられた」というケースだと、基本の過失割合は、「歩行者:自動車=20:80」となります。
ここから、事故発生の時間帯や道路状況等に応じて調整が入ります。
例えば、
・事故の発生時刻は夜間だった(+5)
・事故現場は片側2車線の幹線道路だった(+10)
・自動車は20km/hほど速度超過していた(-10)
というケースであったとします(数字は過失割合の調整分)。
この場合、歩行者の過失割合は、
20+5+10-10=25
で、最終的な過失割合は
「歩行者:自動車=25:75」
に修正されることとなります。
仮に、この交通事故で歩行者に生じた損害が、治療費、慰謝料等を含めて総額300万円だったとします。
そうすると、この事故で歩行者が自動車の運転手(またはその保険会社)に請求できる金額は、
300万円×(100-25)/100=225万円
になってしまうということです。
過失相殺には様々な要素が盛り込まれており、歩行者の年齢(児童・老人か、それ以外か)、自動車の大きさ(大型車か否か)、右折の仕方(早回り・大回り・既右折等)といった事情が加算減算の事由となることもあります。
また、
自動車>自動二輪車>自転車>歩行者
といった一般的な交通上の強弱関係はありますが、交通弱者が必ず保護されるとは限らず、事例によっては自動車×歩行者の事故で歩行者側の過失が50%を超えることもあります。
通常の交通事故の示談金額計算で問題となるのは、この過失相殺くらいまでです。
もっとも、場合によってはその他の特殊事情が検討されることもあります。
次回は、その他の特殊事情である「損益相殺」「無償同乗」「素因減額」について触れてみます。
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