交通事故示談金の計算方法(5)~物的損害~ | 交通事故被害者対応専門|士道法律事務所(大阪弁護士会)

交通事故コラム

2016.11.30示談金額について

交通事故示談金の計算方法(5)~物的損害~

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前回の「交通事故示談金の計算方法(4)~精神的損害~」では、精神的損害について説明しました。

今回は「物的損害」についてです。

「物的損害」は、「物損」という略称の方がなじみ深いかもしれません
「交通事故で損傷した『物』に関する損害」のことで、例えば次のようなものです。

・修理費(交通事故で破損した自動車等の修理代)
・買替差額(買替が必要な場合の事故時時価相当額と売却代金の差額)
・登録手続関係費(買替で必要となった諸費用と自動車取得税)
・評価損(外観や機能の欠陥または事故歴による商品価値の下落分)
・代車使用料(代車を利用した場合の費用)
・雑費(レッカー代、保管料、車両処分費等)
・積荷等の損害(破損した積荷、建物等の損害)

修理費は、交通事故で破損した自動車の修理に要する費用等です。
破損した物を修理によって事故前の状態に戻すのが相当な場合に、適正な修理費相当額が損害として認められます。

実際に修理をしたかどうか、あるいは修理する予定があるかどうかということは関係ありません。
損傷が生じた以上、修理費相当額は損害として認められ、その費用を何に使うかは損害を受けた側の自由です。

問題となるのが、特殊な塗装をしていた場合や、元々色褪せがあった場合です。
この点については、金メッキを施したベンツのバンパーが損傷したが金メッキ修理代の50%までしか損害として認められなかったケース(東京高判平成2.8.27判時1387・68)や、購入後2年経過していたキャデラックが既に褪色していたとして全塗装(2,197,082円)ではなく部分塗装(1,747,590円)の費用のみ損害と認められたケース(東京地判平成7.2.14交民28・1・188)等があります。

買替差額というのは、自動車が物理的全損となった場合、経済的全損(修理するより買い替えた方が安くつく場合)となった場合、車体の本質的構造部分が客観的に重大な損傷を受けて買い替えをすることが社会通念上相当と認められる場合の、事故時の時価相当額と売却代金の差額です。

どういうことかというと、事故に遭った車両の損害は修理費とするのが原則です。
しかし、物理的に修理が不可能な場合には修理費を算定することができません。
また、修理するより買い替えた方が安くつく場合には、無駄な修理をするのは不相当となります。
その他、車体フレーム等の基幹的重要部分に深刻な損傷が生じた場合には、その後の安全性等も考慮して買い替えた方がよいとなります。

例えば、事故直前の時点で時価相当額150万円の自動車が大破して修理不能となった、または修理は可能だが200万円かかると見積もられたとします。
この場合、基本的な損害額は150万円となりますが、事故後未修理の状態の自動車をスクラップ等として10万円で引き取ってもらえた場合、その分を控除して損害額は140万円となります。

登録手続関係費は、前記買替の際に必要となった登録・車庫証明等の手数料やディーラー報酬の相当額や自動車取得税といった費用です。

評価損は、修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により価値下落が見込まれる場合に認められる損害です。
市場価格がなかなか下落しない高級車や、新車購入後間もない時点で事故に遭った場合に認められることがあります。
評価の下落分がそのまま損害額として認められることは滅多になく、認められるとしても修理費の20~30%程度にとどまることが多いです。

代車使用料雑費積荷等の損害は、前記概略記載のとおりですので割愛します。

ちなみに、既に説明してきた「積極的損害」「消極的損害」「精神的損害」は、いずれも「人」に関する損害で、怪我が完治するか、または症状固定となるまで損害額が確定できません。
しかし、「物的損害」は「物」に関する損害で、治療とは関係ありません。
そのため、治療にある程度の期間を要する場合には、「物的損害」の部分についてだけ先に示談をまとめてしまうということが一般的になされています。

ここまでで、交通事故の各種損害と、損害額の簡単な算定方法に触れてきました。
次回は、「過失相殺」について説明します。

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