交通事故示談金の計算方法(7)~損益相殺・無償同乗・素因減額~ | 交通事故被害者対応専門|士道法律事務所(大阪弁護士会)

交通事故コラム

2016.11.30示談金額について

交通事故示談金の計算方法(7)~損益相殺・無償同乗・素因減額~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回の「交通事故示談金の計算方法(6)~過失割合~」で、加害者被害者双方の過失に応じた交通事故示談金の調整の仕方を説明しました。

今回は、やや特殊な事情があった場合の損害額の調整に関する「損益相殺」「無償同乗」「素因減額」についてです。

「損益相殺」とは、交通事故によって被害者(死亡事故の場合は被害者の相続人)に何らかの利益が発生し、その利益が損害の補填であることが明らかである場合に、その利益分を損害額から控除することです。

典型的なのが、自賠責保険金です。
例えば、交通事故で後遺症が残って後遺障害等級認定がなされ、自賠責から保険金が3000万円支払われたとします。
その後相手方と交渉を進めて、損害総額は8000万円、過失割合は10:90になったとします。
この場合、本来相手方に請求できるのは、8000万円×90/100=7200万円となります。
しかし、被害者は既に自賠責から3000万円の支払いを受けているので、この分が控除され、相手方に請求できるのは、7200万円-3000万円=4200万円となります。

その他、裁判で控除が認められたものとしては、受領済みの各種社会保険給付所得補償保険契約に基づいて支払われた保険金等があります。
控除が認められなかったものとしては、搭乗者傷害保険金生命保険金労災保険上の特別支給金地方公務員災害補償基金からの休業援護金等があります。

損益相殺で控除されるものに当たるか否かの判断は細かく分かれていて、ケースごとにその性質を考慮して検討する必要があります。

「無償同乗」とは、自動車の同乗者が交通事故に巻き込まれた場合、無償で同乗していたことを理由に損害賠償額が減額されるか、という問題です。
例えば、運転手Xが友人Aとドライブに出かけ、Xの居眠り運転による自爆事故でAが怪我した場合、Aが運賃等を負担せず無償でXに運んでもらっていたことを理由として、AがXに請求できる損害賠償額が減額されるのか、ということです。

この点については、無償で運んでもらっていたということだけでは減額はされません

ただし、運転手が長時間一人で運転を担当して疲弊しているのを知りながら同乗者が運転を変わろうとしなかった同乗者は運転手が飲酒して運転しているのを知っていた同乗者がシートベルトを装着せずダッシュボードに両足を乗せていたことで同乗者の怪我が重くなった、といった事情があれば損害賠償額が5~25%程度減額されることがあります。

事故発生の危険を認識しながら同乗したり、事故の発生や拡大に同乗者が関与したりしていた場合には、同乗者も一定の責任を負わされる、ということです。

「素因減額」とは、被害者に特異な精神的傾向、既往の疾患、身体的特徴があった場合に、損害賠償額が減額されるか、という問題です。
精神的傾向は「心因的要因」、既往の疾患や身体的特徴は「体質的・身体的素因」と呼ばれます。

心因的要因で減額が認められたものとしては、「被害者の特異な性格等によって神経症を引き起こし、回復に向けた被害者の自発的意欲の欠如等も相まって不適切な治療が継続され、結果、症状の悪化と固定化を招いた」として損害額が40%減額されたケースがあります。

体質的・身体的素因で減額が認められたものとしては、「一酸化炭素中毒に罹患し、潜在的に各種精神的症状を潜在的に有していた被害者が、事故による頭部打撲で精神的症状を顕在発現化させて死亡した」として損害額が50%減額されたケースがあります。

また、事故後に被害者が自殺した場合には、自殺による損害と事故との間に因果関係があるか、という問題の他に、心因的要因の寄与が問題となって減額が肯定されることもあります。

交通事故の示談金の計算方法に関する説明はこれで終了となります。

次回は、これまでに見てきたことをまとめて締めくくりたいと思います。

関連の記事

    関連記事はまだありません。

最新の記事

初回相談料・着手金無料 ご相談はこちらから
弁護士費用に関して

交通事故コラム

交通事故解決には様々な知識が必要です。
このコラムでは交通事故に関しての様々な情報を公開しております。

カテゴリーCATEGORY

  • 法律相談について
  • 弁護士費用について
  • 示談金額について
  • 後遺障害について
  • 死亡事故について
  • その他