2018.05.28示談金額について
前回は交通事故で被害者が死亡した場合の慰謝料について見てみました。
今回は死亡事故における逸失利益についてです。
逸失利益については、
「交通事故の後遺症(3)~後遺症による逸失利益 その1~」
「交通事故の後遺症(4)~後遺症による逸失利益 その2~」
でも触れました。
死亡事故の場合、後遺障害が残った場合の逸失利益とは異なる計算式を使用します。
具体的には次の計算式です。
基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
「基礎収入額」「ライプニッツ係数」については後遺障害の場合とほとんど同じです。
後遺障害の場合と違うのは、労働能力喪失率は問題とならないこと(死亡すれば労働能力は100%失われるので)、生活費控除率という概念が出てくることです。
「生活費控除率」というのは、「支出が不要となった生活費をいくら差し引くか」ということです。
交通事故で被害者が死亡した場合、その被害者が将来稼げたはずの収入が失われますが、同時にその被害者が消費するはずだった生活費も発生しないことになります。
死亡事故で逸失利益を計算するときには、この生活費の支出部分も考慮して調整を行うということです。
生活費控除率の基本割合は被害者の属性に応じて次のように定められています。
(A)一家の支柱
a.被扶養者が1人の場合 40%
b.被扶養者が2人以上の場合 30%
(B)女性(主婦、独身、幼児等含む) 30%
(C)男性(独身、幼児等含む) 50%
これらの割合は絶対的なものではなく、事情によって30%~50%の範囲で変化します。
例えば、小学5年生の子がいる女性と事故の1週間後に結婚式を挙げる予定だった独身男性について、本来の生活控除率は50%であるところを30%とした事例などがあります(大阪地判平成17年3月11日自保ジ1613.8)。
具体例として、
・年収額面総支給額500万円、手取り400万円の男性会社員
・36歳のときに交通事故に遭って事故直後に死亡した
・妻と二人暮らしで子はいなかった
というケースでの死亡逸失利益を計算してみましょう。
まず「基礎収入額」は額面支給額の500万円となります。
この被害者は一家の支柱で、扶養家族が1人いるため「生活費控除率」は40%となります。
就労可能上限年齢は原則として67歳です。
死亡時36歳の場合、67歳までの「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」は15.372です。
500万円×(1-40%)×15.372=4611万6000円
これがこのケースでの逸失利益となります。
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